Camera trapping photographic rate as an index of density in forest ungulates.
Journal of Applied Ecology 46 1011-1017
【イントロ】
自動撮影カメラは、捕獲困難な野生動物の生息確認(Silveira, Jacomo & Diniz-Filho 2003,Rovero & De Luca 2007, Tobler et al. 2008) や、野生動物の活動パターンおよび生息地利用の把握(Bowkett, Rovero & Marshall 2007)、個体識別が可能な種(トラ、ジャガーなど)の捕獲-再捕獲モデルに基づく生息密度推定(Karanth & Nichols 1998, Silver et al. 2004, Maffei et al. 2004)など、幅広く用いられています。
一方で、自動撮影カメラによる撮影頻度を野生動物の生息密度の指標として扱った研究は限られています。しかし、自動撮影カメラによる撮影頻度による生息密度の推定は、写真からは個体が識別できない、大多数の哺乳類の研究に応用が可能といえます。
これまで、Carbone et al. (2001)やO’Brien et al.(2003)などによって、自動撮影カメラによる撮影頻度による野生動物の生息密度の推定が試みられてきました。これらの先行研究では、データの独立性や、動物種間の撮影頻度の差などの点で問題が指摘されているものの、自動撮影カメラは今後が期待されるツールであるといわれています。
Rowcliffe et al. (2008)は、飼育下の動物による実験データを用いて、理想気体モデルから自動撮影カメラの前を野生動物が通過する尤度を計算し、生息密度を推定する方法を新たに考案しました。しかし、この手法はまだ野外では適用されていません。
この論文で、著者らはタンザニアのウズングワ山地に生息する Harvey’s duiker(ウシ科ダイカー族)を対象種とし、自動撮影カメラによる撮影頻度を、野生動物の生息数の指標とするためのサンプリング方法とモニタリング調査の計画方法について検討しています。また、Rowcliffe et al.(2008)による生息密度の計算方法と、従来の方法の比較を行い、生息密度の推定値への影響についても検討しています。
【方法】
著者らは、2004年7月から2005年9月にかけて5箇所の調査サイトにおいて、ライントランセクト法と自動撮影カメラによるカメラトラップ法による生息密度調査を行っています。(※2008年12月から2009年3月にかけて1箇所で追加調査を実施しており、調査サイトは計6箇所となっています)
ライントランセクト法では、各調査サイトで3.1-4kmのトランセクトを設定し、月2回(合計10-23回)トランセクトを朝7:00-7:30から時速1km程度で踏査し、目視によって確認したダイカーを記録し、DISTANCE ver.5.0によって調査サイトにおけるダイカーの生息密度を推定しました(詳細はRovero&Marshall 2004を参照)。
【結果】
ライントランセクト法では、Harvey’s duikerが6トランセクトで合計93回観察されました。Blue duikerは1回、suniとbushbuckは声のみ観察され、Abott’s duikerは目視でも声でも観察されませんでした。Harvey’s duikerの生息密度は2.07〜13.32頭/km2と推定され、サイト間で大きく異なっていました。
カメラトラップ法では、815枚写真が撮影されました。最も多く撮影されたのはHarvey’s duiker(600枚)で、suni(157枚)、bush buck(27枚)、Abbott’s duiker(24枚)、 blue duiker(7枚)の順となりました。全ての調査サイトで撮影された種はHarvey’s duikerのみで、100カメラ日あたり平均15.2枚撮影されました。
6つのトランセクト上で、Harvey’s duikerは100カメラ日当たり2.8〜28.9枚撮影されました。線形回帰の結果、トランセクト法によって推定されたHarvey’s duikerの生息密度と自動撮影カメラによる撮影頻度の間には有意な関係性(R2=0.90)が認められました。カメラトラップによるサンプリング精度は、250-300カメラ日に到達するまで上昇し、その後頭打ちとなりました。Rowcliffe et al. (2008)による生息密度の変換式によって撮影頻度から生息密度を推定した結果は、4.74〜49.96頭/km2と、ライントランセクトよりも高い値となりました。
【考察】
先行研究では、自動撮影カメラによる撮影頻度を野生動物の生息密度の指標とするには、生息密度を独立した方法で調べ、補正を行うことの必要性が議論されてきました。著者らは、複数の森林でHarbey’s duikerの生息密度をライントランセクト法とカメラトラップ法、2つの手法で調べ、自動撮影カメラによる撮影頻度の生息密度指標としての実用性を証明しました。
Rowcliffe (2008)の変換方法による生息密度の推定値とライントランセクト法による推定値の差が大きかった理由としては、(1)気体モデルは真の動物の移動や相互作用を反映していない(2)移動速度や日中の行動圏など、測定が難しいパラメータを入力する必要がある、といった点から推定誤差が大きくなっている可能性があること、一方でライントランセクト法による生息密度の推定値は、発見率の低さから、多くの動物種の生息密度を過小評価している可能性がある、と指摘しています。
また、カメラトラップ法は、調査者間の能力差など、ヒューマンエラーによる誤差が少ないことや、初期投資こそ大きいものの、人件費の削減といった観点からも、今後が期待される手法である、と著者らは述べています。
☆ ☆感想☆☆
Methodological insightsとしての記事だったので、かなり実用的な内容の論文でした。今後、対象種によって必要なトランセクトの長さや設置期間がどのぐらい違うのか?ということが具体的に明らかになってくると、おもしろい手法として発展していく可能性がありそうだと感じました。
(おおはし)
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