Bowkett,A.E., Rovero,F., & Marshall, A.R. (2008)
The use of camera-trap data to model habitat use by antelope species in the Udzungwa Mountain foests, Tanzania.
African Journal of Ecology 46,479-487.
【背景】
アフリカ大陸の森林性アンテロープ,ダイカーは,近年,絶滅の危機に瀕しており,種の保全には分布および個体数を決定する要因の解明が不可欠です。しかし,定量的なハビタットモデルの構築には,直接観察による方法では発見率の低さ,糞や獣道といったフィールドサインを利用した間接的な方法では手法的な問題が,それぞれモデル構築に必要な生息密度推定の障壁となっていました。
【方法】
著者らは2004年7月から2005年9月にかけて,タンザニアのウズングワ山脈においてカメラトラップ法により森林性アンテロープの調査を行いました。カメラトラップによる撮影頻度と植生など他のハビタット変数との関係についてGLMによる解析を行いました。
生息地モデルの構築には,(1)林冠の被覆率(2)胸高直径>10cmの樹木の密度(3)胸高直径>10cmの樹木の多様度(4)胸高直径 5-10cmの樹木の密度(5)胸高直径5-10cmの樹木の多様度(6)高さ1mで<5cmの茎の多様度[高さ1mで<5cmの茎の密度,草本の被度と負の相関](7)見通しのよさvisibility(8)リターの被覆率[木本・草本の被覆度と負の相関](9)最も近い村との距離[実生の密度と正の相関]を変数として用いました。(多様度指数はShimpson's Dを使用)
【結果および考察】
調査期間中,630枚以上のアンテロープの写真が撮影され、Harvey’s duikerが524枚撮影,Suniが99枚,それぞれ撮影されました。BushbuckとAbbott’s duikerも撮影されましたが,サンプル数が不十分であったため,生息地モデルを構築することができませんでした。
本研究で構築されたモデルによってHarvey’s duikerのカメラトラップによる撮影頻度の70.11%が説明されました。
Harvey’s duikerの撮影頻度は,小型の植物の多様性と正の相関,見通しのよさと負の相関,最も近い村との距離とも負の相関がみられました。著者らは Harvey’s duikerの生息には餌資源となる下層植生の多様性が重要と考察しています。また,村からの距離が遠くなるほど,撮影頻度が高くなる傾向が確認されましたが,これは人間活動に伴うハビタットの違いや,狩猟による影響が考えられる,と述べています。
Suniについては,カメラトラップによる撮影頻度の65.13%がモデルによって説明されました。Suniの撮影頻度は,リターの被覆度と負の相関がみられました。リターの被覆度は林床の木本・草本の被覆度と負の相関を示すことから,Suniが密度が高く,丈の低い植生を好んでいる可能性が示唆されました。
本研究により,カメラトラップによる撮影頻度から定量的な生息適地モデルが構築できる可能性が示されました。今後は,外来種の影響や,燃料としての木枝の採取が植物種の多様性に与える影響などを調べることや,様々な攪乱強度やハビタットを含む地域で調査を行い,今回構築したモデルを確認し,修正していくことが必要,と著者らは論文を締めくくっています。
☆☆感想☆☆
前回紹介した論文と同じ研究グループによる論文です。植生の構造だけでなく多様性が変数として組みこまれている点はおもしろかったのですが、因果関係として説明できるのか、という点については少し疑問が残りました。
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