2009年12月17日木曜日
日本農業経済学会にエントリー。
タイトルは「イノシシによる地域農業被害の実態と対策の方向性-栃木県佐野市K土地改良区の事例-」です。11~12月に実施した調査の結果をとりあえずまとめてみた、という程度の内容ですが、今後の(社会経済分野における)研究の方向性を、多少なりとも示せたのではないかと思います。具体的には、鳥獣被害問題は(ある局面においては)農業構造問題に接続しうる、という示唆を込めたつもりです。
今回の報告を足場にして、農地の利用状況や農家経済について、より綿密な調査・分析を行なっていきたいと思います。
取り急ぎご報告まで。
(桑原)
2009年12月16日水曜日
里山野生鳥獣管理技術者養成プログラム第二回研修に参加させていただきました!
里山野生鳥獣管理技術者養成プログラム
この研修は、養成プログラム履修生以外の受講も可能、ということで、農工大から2名(大橋、齋藤)が参加させていただきました。
今回は、埼玉県農林総合研究センターの古谷益朗氏による「ハクビシンの生態を踏まえた対策手法」と「獣害防止柵設置実習(ハクビシン)」という講義でした。
午前中に研修室で講義を受けたあと、実習では、忍者のように身軽なハクビシンの性質を逆手に取った柵を受講生全員で設置しました。
柵を設置する時の道具の使い方や体の使い方、注意しなければならないことなど、いろいろ実地で学ばないとわからないことが多いなぁ、としみじみ実感しました。
栃木県職員のみなさま、宇都宮大学のみなさま、ありがとうございました!
できればまた参加させていただきたいです。よろしくお願いします。
(おおはし)
2009年12月11日金曜日
集落環境点検に行ってきました(その2)
2009年12月10日木曜日
集落環境点検にいってきました(その1)
先方のご好意で、私(大橋)と弘重さん、栃木県から2名、宇大から2名が、お邪魔させていただきました。
今日はその時の写真を紹介します。
朝、集合。
4つの班に分かれて、点検を行いました。私は山際の点検をする班に混ぜてもらいました。
獣の出入り口、発見。
もう耕作していない畑に、くっきりと獣道が残っています。
稲を刈りとった後のひこばえも、野生動物の餌になってしまっています。
電気柵を張っていても、その背後が薮になってしまっていると、効果が薄くなってしまうそうです。
マツ枯れ、ナラ枯れが目立ちました。
ここは、背後の薮刈り、有刺鉄線、電気柵、すきこみ、4点揃った優等生!
ドングリのついたアラカシの下で、トタンの柵が突破されていました。
下にはまだ新しいイノシシの足跡・・・。
ふと目を向けると、ノコンギクが咲いていました。
帰ってから、重要だったポイントを確認していきます。
今日見たものを報告しあって、みんなで情報を共有します。
最後に、1枚の地図にまとめます。この地図をもとに、今後の作戦を立てていくそうです。
以上、簡単ですが、ご紹介させていただきました。
くわしい解説は、専門家の弘重さんにお任せします(よろしくお願いします)。
今回の集落点検に参加させていただくにあたって、滋賀県農業技術振興センターの方々、滋賀県湖東農業農村振興事務所の方々、多賀町役場の方々、滋賀県立大学の野間先生、富乃尾集落のみなさま、など、多くの方にお世話になりました。
本当にありがとうございました!
(おおはし)
2009年12月8日火曜日
佐野市の野生動物は?
秋の調査で撮った写真から、その一端をご紹介します。
まず、この写真。
車を走らせていると目の端に何かが・・。思わず二度見してしまいましたが、車を止めてみると、菜の花畑(とおばあちゃんに教えて貰いました)にイノシシ!
双眼鏡で覗いてみると、ウリ模様が消えたばかりほどの子供が3頭。
よくよくみると、菜の花の隙間にびっしり生えているメヒシバを食べているようです。しかも、子供たちはしっぽをプリプリ振っています。島根の井上雅央さんから、イノシシが尾を振るのはリラックスしている証拠と教わりました。母親を探してみると、彼女は針葉樹の下からさほど離れず、尾をピンと立てて警戒モードになっていました。流石に母は警戒するかと思いましたが、彼女の子供たちが子育てをすると思われる来年には、母になっても尾をプリプリしながら草を食むイノシシとなっているかもしれません・・・。
そこへ夕方のお散歩をしているおばあちゃん2人がやってきました。
イノシシ達は、人が50mほどまで近づくと、ようやくもの凄い速さで笹薮のなかに逃げ込みました。私はそれから暫くおばあちゃんとお喋りしましたが、どうもイノシシがいたことに気が付いていなかったようです。
この後もイノシシ親子は、人影がなくなるとすぐさま畑に出てきて採食を繰り返しました。佐野市内の集落は、イノシシにとって、車なんてへっちゃらで、人間もたいして怖くない、安心して餌が食べられる場所になっているようです。
もう1枚、写真をご紹介します。
こちらも佐野市内で植生・痕跡調査中に撮ったものです。
離れザルと思われる逞しいオスザル(たぶん)が川縁でひなたぼっこしていました。私たちは対岸にいたので、大声を出すとしぶしぶという感じでノロノロと逃げていきました。集落は、イノシシだけではなく、他の動物にとっても居心地のよい場所になっているようです。
また、先日、桑原さんの聞き取り調査に見習いとして連れていって貰いました。私達が調査地として考えている戸奈良と山(とゴルフ場)を越えた東隣にある三好集落では、最近、シカやらサルの被害も出始めているそうです。イノシシだけでなく、サル・シカ・クマなど複合被害に対応できる対策を今から考えていく必要があると実感しました。試行錯誤をしながら、少しずつ前進できたらと思います!
*
冬季も糞などの痕跡調査を定期的に行っていきます。夏に植生調査をした場所を中心に歩いてみようと考えています。それをもとに来年度は、ルートを決めて踏査しようと思います。
(さいとう)
【論文紹介】Lada et al.(2008)
Impacts of massive landscape change on a carnivorous marsupial in south-eastern Australia: inferences from landscape genetics analysis.
Journal of Applied Ecology 45, 1732-1741.
【イントロ】
森林の農地への転換や、伐採、河川の改変などの人間活動に伴う生息地の劣化および分断化は、世界各地で野生動物の生息状態に悪影響を及ぼしています。景観遺伝学的解析は、景観全体での野生動物の移動・分散経路や遺伝子流動(gene flow)を明らかにし、遺伝子流動を阻害(barriers)および促進(facilitators)する景観構造物を特定することが可能であることから、景観全体における野生生物の保全計画の策定に役立つ手法として注目されています。オーストラリアのビクトリア州中部は、過去160年間に大規模に改変され、植生の大部分が消失・劣化していますが、部分的に残存している森林パッチにはyellow-footed antechinus(フクロネコ科アンテキヌス属)など、森林性の種が生き残っています。著者らは分断化された生息地における個体群の存続性を明らかにするため、高い分散能力をもち、オーストラリアにおける唯一の小型の肉食性哺乳類であるアンテキヌスをモデル種とし、過去および現在の個体群間の遺伝子流動を明らかにするため、11のマイクロサテライト領域とミトコンドリアDNA調節領域(D-loop)の変異を解析しました。また、GISを用いて植被、皆伐地、道路、河川にそれぞれ異なる「移動コスト」を設定し、最小コストパス法によって景観構造による遺伝子流動への影響を調べました。
(20091209)
<随時中断し、こまめに書き加えることにします。>
☆ ☆感想☆☆
実験手法の専門用語がさっぱりわかりません。が、結論がおもしろそうなので読んでみることにしました。誤訳があったら、指摘してください。
2009年12月7日月曜日
【論文紹介】Bowkett,A.E. et al.(2008)
The use of camera-trap data to model habitat use by antelope species in the Udzungwa Mountain foests, Tanzania.
African Journal of Ecology 46,479-487.
【背景】
アフリカ大陸の森林性アンテロープ,ダイカーは,近年,絶滅の危機に瀕しており,種の保全には分布および個体数を決定する要因の解明が不可欠です。しかし,定量的なハビタットモデルの構築には,直接観察による方法では発見率の低さ,糞や獣道といったフィールドサインを利用した間接的な方法では手法的な問題が,それぞれモデル構築に必要な生息密度推定の障壁となっていました。
【方法】
著者らは2004年7月から2005年9月にかけて,タンザニアのウズングワ山脈においてカメラトラップ法により森林性アンテロープの調査を行いました。カメラトラップによる撮影頻度と植生など他のハビタット変数との関係についてGLMによる解析を行いました。
生息地モデルの構築には,(1)林冠の被覆率(2)胸高直径>10cmの樹木の密度(3)胸高直径>10cmの樹木の多様度(4)胸高直径 5-10cmの樹木の密度(5)胸高直径5-10cmの樹木の多様度(6)高さ1mで<5cmの茎の多様度[高さ1mで<5cmの茎の密度,草本の被度と負の相関](7)見通しのよさvisibility(8)リターの被覆率[木本・草本の被覆度と負の相関](9)最も近い村との距離[実生の密度と正の相関]を変数として用いました。(多様度指数はShimpson's Dを使用)
【結果および考察】
調査期間中,630枚以上のアンテロープの写真が撮影され、Harvey’s duikerが524枚撮影,Suniが99枚,それぞれ撮影されました。BushbuckとAbbott’s duikerも撮影されましたが,サンプル数が不十分であったため,生息地モデルを構築することができませんでした。
本研究で構築されたモデルによってHarvey’s duikerのカメラトラップによる撮影頻度の70.11%が説明されました。
Harvey’s duikerの撮影頻度は,小型の植物の多様性と正の相関,見通しのよさと負の相関,最も近い村との距離とも負の相関がみられました。著者らは Harvey’s duikerの生息には餌資源となる下層植生の多様性が重要と考察しています。また,村からの距離が遠くなるほど,撮影頻度が高くなる傾向が確認されましたが,これは人間活動に伴うハビタットの違いや,狩猟による影響が考えられる,と述べています。
Suniについては,カメラトラップによる撮影頻度の65.13%がモデルによって説明されました。Suniの撮影頻度は,リターの被覆度と負の相関がみられました。リターの被覆度は林床の木本・草本の被覆度と負の相関を示すことから,Suniが密度が高く,丈の低い植生を好んでいる可能性が示唆されました。
本研究により,カメラトラップによる撮影頻度から定量的な生息適地モデルが構築できる可能性が示されました。今後は,外来種の影響や,燃料としての木枝の採取が植物種の多様性に与える影響などを調べることや,様々な攪乱強度やハビタットを含む地域で調査を行い,今回構築したモデルを確認し,修正していくことが必要,と著者らは論文を締めくくっています。
☆☆感想☆☆
前回紹介した論文と同じ研究グループによる論文です。植生の構造だけでなく多様性が変数として組みこまれている点はおもしろかったのですが、因果関係として説明できるのか、という点については少し疑問が残りました。
2009年12月6日日曜日
佐野市戸奈良町調査(第3回)
本格的な調査は今回が3回目になります。
鹿島土地改良区(水利組合)の耕作者さんにお話を伺っています。
*
今回印象深かったのが、先月、イノシシが県道脇の土手を崩してしまったというお話でした。
崩された土は道路の中程まで散らばり、通行に支障を来たすような状態だったそうです。
土手の上の畑の所有者さんが県に連絡をとり、県の迅速な対応のおかげで復旧できたとのことでした。
写真は復旧後の土手です(12月6日撮影)。
地肌がまだ新しいのが判るかと思います。
調査に伺ったお宅では大変温かく対応していただいており、感謝しています。
今回はあるお宅で、お昼ごはんに自家生産のそば粉を使ったそばをいただきました。
とてもおいしかったです。(今年はそばの出来があまりよくないとのことですが・・・)
また、ほかのお宅でもユズやミカンなどをいただきました。
本当にありがとうございました!
*
鹿島土地改良区耕作者さんの調査は、今月12日でひとまず一段落です。
その後は調査結果をまとめ、分析する作業に本格的に入ります。
(桑原)
2009年12月3日木曜日
滋賀県の集落環境点検に参加してきます
被害箇所や環境整備の必要な箇所等を、
住民と行政職員が一緒に点検する
「集落環境点検」が行われています。
12月6日(日)には、多賀町の集落で集落環境点検が行われます。
先方のご好意で、
この集落環境点検に参加させていただけることになりました。
大橋、弘重の二名で参加してきます。
また、当プロジェクトと連携しています、
栃木県から二名、宇都宮大学から二名も参加予定です。
当日の様子は、後日ご報告いたします。
集落環境点検については、
滋賀県農業技術振興センターのHPがとても参考になります。
http://www.pref.shiga.jp/g/nogyo/
http://www.pref.shiga.jp/g/nogyo/kikaku/090128/syuurakutenken1.pdf
http://www.pref.shiga.jp/g/nogyo/kikaku/090128/syuurakutenken2.pdf
(ひろしげ)
公開シンポジウム「シカを食べて生態系を守る」開催
この問題の解決の糸口を得るために、「鹿肉食のすすめ 日本人は鹿肉で救われる」を上梓された作家のC.W.ニコル氏と、エゾシカの有効活用の旗振り役であるエゾシカ協会会長の近藤誠司北海道大学大学院教授をお招きし、公開シンポジウム「シカを食べて生態系を守る」を、2009年11月8日(日)に東京農工大学農学部本館講堂で開催しました(主催:東京農工大学農学部附属フロンティア農学教育研究センター「統合的な野生動物管理システム構築プロジェクト」、共催:東京農工大学農学部学園祭実行委員会)。学園祭期間中ということもあり、約270名の方にご来場いただきました。
シンポジウム前半の講演において、C.W.ニコル氏は、人間とシカの文化的な結びつき、現在シカが日本の生態系に与えている影響、生態系保全のために鹿肉を食べることの意味等について、ユーモアを交えてお話しくださいました。
また近藤誠司氏は、人類の発達にとって肉食が重要な役割を果たしたこと、肉食に対する宗教的・政治的禁忌があったと考えられている日本においても長く鹿肉が食べられてきたこと、明治以前は鉄砲が農具として用いられてきたこと等を、詳細な資料をもとにお話しくださいました。
シンポジウム後半のパネルディスカッションでは、C.W.ニコル氏、近藤誠司氏とともに、本学の「統合的な野生動物管理システム構築プロジェクト」代表の梶光一教授がパネラーとなり、会場と意見交換を行ないました。特に、狩猟者やレンジャー等の人材をどう育成するかについて活発な質疑応答がなされました。
C.W.ニコルさん、近藤誠司さん、また会場に足を運んでくださった方々、本当にありがとうございました!
2009年12月2日水曜日
第四回 野生動物管理システムフォーラム【10/23(金)】
講演では、湯本氏が「人間-自然関係の理論的モデルの構築プロジェクト」に文科系理科系あわせて130名!あまりの研究者とともに取組んでおられるようすをご紹介いただきました。
具体的には、
縄文時代以降、一貫して人口稠密地域であった日本列島において、大部分の自然が人間活動の影響を受けてきたにもかかわらず、豊かな生物相が維持されてきた理由について、
1)古植生・古生態および植物と動物の分布変遷の解明
2)古人骨の食性分析による人間生態学的な解析
3)過去の人間-自然関係の復元と、その背景となる社会・経済システムの解明
といった文字通り文理融合のアプローチを通して、人間と自然の相互関係を歴史的・文化的に検討されていました。
そのうえで、
今後、生物資源の賢明な利用(wise use)を行っていくためには、重層する環境ガバナンス(家計から自治体、国、国家間)を調整し、環境の変化のスピードに合わせて柔軟に対応できる環境ガバナンスを構築すること(順応的な管理)必要であることをお話しくださいました。
野生動物の問題にもさまざまなステークホルダーが関わっており‘重層するガバナンス’が存在します。‘順応的な管理’を行いながら、収穫できる農業を継続してゆけるような社会システムのあり方を皆で考えていきたいと思います。湯本先生には、懇親会や二次会でも面白いお話を聞かせていただき、楽しいひとときとなりました。
湯本先生、ありがとうございました!
今後、以前のフォーラムなどについても随時更新していく予定です。
(さいとう)
2009年12月1日火曜日
【論文紹介】Rovero, F. & Marshall, A.R (2009)
Camera trapping photographic rate as an index of density in forest ungulates.
Journal of Applied Ecology 46 1011-1017
【イントロ】
自動撮影カメラは、捕獲困難な野生動物の生息確認(Silveira, Jacomo & Diniz-Filho 2003,Rovero & De Luca 2007, Tobler et al. 2008) や、野生動物の活動パターンおよび生息地利用の把握(Bowkett, Rovero & Marshall 2007)、個体識別が可能な種(トラ、ジャガーなど)の捕獲-再捕獲モデルに基づく生息密度推定(Karanth & Nichols 1998, Silver et al. 2004, Maffei et al. 2004)など、幅広く用いられています。
一方で、自動撮影カメラによる撮影頻度を野生動物の生息密度の指標として扱った研究は限られています。しかし、自動撮影カメラによる撮影頻度による生息密度の推定は、写真からは個体が識別できない、大多数の哺乳類の研究に応用が可能といえます。
これまで、Carbone et al. (2001)やO’Brien et al.(2003)などによって、自動撮影カメラによる撮影頻度による野生動物の生息密度の推定が試みられてきました。これらの先行研究では、データの独立性や、動物種間の撮影頻度の差などの点で問題が指摘されているものの、自動撮影カメラは今後が期待されるツールであるといわれています。
Rowcliffe et al. (2008)は、飼育下の動物による実験データを用いて、理想気体モデルから自動撮影カメラの前を野生動物が通過する尤度を計算し、生息密度を推定する方法を新たに考案しました。しかし、この手法はまだ野外では適用されていません。
この論文で、著者らはタンザニアのウズングワ山地に生息する Harvey’s duiker(ウシ科ダイカー族)を対象種とし、自動撮影カメラによる撮影頻度を、野生動物の生息数の指標とするためのサンプリング方法とモニタリング調査の計画方法について検討しています。また、Rowcliffe et al.(2008)による生息密度の計算方法と、従来の方法の比較を行い、生息密度の推定値への影響についても検討しています。
【方法】
著者らは、2004年7月から2005年9月にかけて5箇所の調査サイトにおいて、ライントランセクト法と自動撮影カメラによるカメラトラップ法による生息密度調査を行っています。(※2008年12月から2009年3月にかけて1箇所で追加調査を実施しており、調査サイトは計6箇所となっています)
ライントランセクト法では、各調査サイトで3.1-4kmのトランセクトを設定し、月2回(合計10-23回)トランセクトを朝7:00-7:30から時速1km程度で踏査し、目視によって確認したダイカーを記録し、DISTANCE ver.5.0によって調査サイトにおけるダイカーの生息密度を推定しました(詳細はRovero&Marshall 2004を参照)。
【結果】
ライントランセクト法では、Harvey’s duikerが6トランセクトで合計93回観察されました。Blue duikerは1回、suniとbushbuckは声のみ観察され、Abott’s duikerは目視でも声でも観察されませんでした。Harvey’s duikerの生息密度は2.07〜13.32頭/km2と推定され、サイト間で大きく異なっていました。
カメラトラップ法では、815枚写真が撮影されました。最も多く撮影されたのはHarvey’s duiker(600枚)で、suni(157枚)、bush buck(27枚)、Abbott’s duiker(24枚)、 blue duiker(7枚)の順となりました。全ての調査サイトで撮影された種はHarvey’s duikerのみで、100カメラ日あたり平均15.2枚撮影されました。
6つのトランセクト上で、Harvey’s duikerは100カメラ日当たり2.8〜28.9枚撮影されました。線形回帰の結果、トランセクト法によって推定されたHarvey’s duikerの生息密度と自動撮影カメラによる撮影頻度の間には有意な関係性(R2=0.90)が認められました。カメラトラップによるサンプリング精度は、250-300カメラ日に到達するまで上昇し、その後頭打ちとなりました。Rowcliffe et al. (2008)による生息密度の変換式によって撮影頻度から生息密度を推定した結果は、4.74〜49.96頭/km2と、ライントランセクトよりも高い値となりました。
【考察】
先行研究では、自動撮影カメラによる撮影頻度を野生動物の生息密度の指標とするには、生息密度を独立した方法で調べ、補正を行うことの必要性が議論されてきました。著者らは、複数の森林でHarbey’s duikerの生息密度をライントランセクト法とカメラトラップ法、2つの手法で調べ、自動撮影カメラによる撮影頻度の生息密度指標としての実用性を証明しました。
Rowcliffe (2008)の変換方法による生息密度の推定値とライントランセクト法による推定値の差が大きかった理由としては、(1)気体モデルは真の動物の移動や相互作用を反映していない(2)移動速度や日中の行動圏など、測定が難しいパラメータを入力する必要がある、といった点から推定誤差が大きくなっている可能性があること、一方でライントランセクト法による生息密度の推定値は、発見率の低さから、多くの動物種の生息密度を過小評価している可能性がある、と指摘しています。
また、カメラトラップ法は、調査者間の能力差など、ヒューマンエラーによる誤差が少ないことや、初期投資こそ大きいものの、人件費の削減といった観点からも、今後が期待される手法である、と著者らは述べています。
☆ ☆感想☆☆
Methodological insightsとしての記事だったので、かなり実用的な内容の論文でした。今後、対象種によって必要なトランセクトの長さや設置期間がどのぐらい違うのか?ということが具体的に明らかになってくると、おもしろい手法として発展していく可能性がありそうだと感じました。
(おおはし)